ライターが同行しているのに自分が8割方インタビューしてしまい、それでも自分は良い取材が出来たとご満悦な編集者を自分の立場から見ると、まあほんとうに「ふざけんな、そこまでやるなら原稿も自分で書けばいいじゃねえか」と思う。僕にインタビュー経験があること前提で依頼してきているのにこういう立ち回りをする編集者は、はっきりいって(ライター同席における取材の)クラッシャーだとも思う。
ではあるが、インタビューの役割分担はライターと編集者の距離感・力量・あらかじめ決められた役割分担 などに応じて様々なのだとは思う。ざっと思う限りで、どんなケースがあるのか、またケースに応じた対策を考えてみたいと思う。
自分自身もライター・編集者経験が両方あり、ライターの取材に同行した経験もある。さらに、ライターとしてクラッシャー編集者と同席取材をしたこともあるので、そこで得た知見を元に以下書いてみる。
0)編集者同席の場合、質問してもらう時間は作れ
これは前提ではあるが、編集者同席の取材の場合には、編集者が自由に質問できる時間帯は設けるべきだ。事前調整だけでは伝わりきっていない記事のコアになり得る部分もあるかもしれないし、編集者的にもっと掘り下げたい部分もある。
多くは取材したなかで生まれてくる質問だろうから(想定質問は分かってるはずだから)、取材中でもテーマが変わる部分、また、取材の最後に、編集者へ「ここまででお尋ねしたいこと、何かありますか?」と振るのが良いだろう。
多くの編集者は、まあこういう時間帯があるよね、と認識して同行しているとは思う。
さらに、質問事項を事前に編集者と共有するケースがあるなら、このタイミングで編集者の質問タイム、というすりあわせをしておくのも良いだろう(万が一クラッシャーだった場合の保険にもなる)。
気心知れている編集者であれば、気にするようなテーマでもないように思う。あうんの呼吸で、ライターの質問タイムも作ってくれ、自分の質問も上手にしているものだ。
1)そもそもどう依頼しているのか
そもそも編集者からライターに取材依頼した際にどう書き添えているのか。
編「私がインタビューするので、所々(あるいは最後に)補足があればライターさんが追加で質問してください。その上で原稿にしてください」
こんな依頼であれば、編集者が8割話を聞くことは問題ないだろう。だってそういう依頼だもん。どうしても自分主導でインタビューしたいなら交渉すればいい。不調に終わるなら断るだけ。
こうしたケースは経験があり、その際は編集部側で事前に質問事項も作られていた。ライターは「現場の空気感を知る」のがインタビュー同行の参加目的だった感がある。
この場合、現場へ移動する交通費とか手間賃はしっかりもらいたい所よね。確実にライターの時間コストや交通費は発生するので、そこは調整に入れよう。
2)ライターのインタビュー経験が少なそうな場合
そのメディアでライターとしてデビューしたような人で、編集者がライターの力量を把握しており、ライターが「まだインタビュースキルが低い」と自覚しつつ、編集者にその自覚を共有できるケースもあるだろう。この場合も1に合流するのではないか。
編集サイドとしてはライターを育てる意図もあるだろうし、インタビューの現場で経験を積ませたいと考えれば、こんなケースもあり得る。良いんじゃないの。
3)オウンドメディア関連の取材でもありうる
オウンドメディアの取材などで同行者がプロの編集者ではなく、その企業のオウンドメディア担当というケースもある。
オウンドメディア担当者さんはプロの編集者ではないので、取材の立ち回りにおける機微などはご存じないケースもあるだろう。それはそれ、仕方ない。一緒に仕事をして関係性を深めて行くなかで、そうした呼吸を育てていければそれでいい。
ご経験の少ないオウンドメディア担当者による質問の占拠は、決して「取材クラッシャー」ではない
ことはここで強調しておく。
このケースを経験したライターであれば、対策はいろいろ取れる。打ち合わせ時に
ラ「質問事項を聞き切ることを優先したいです。切りのいいところで担当者さんから自由に質問できるタイミングを作りますので、そこでお尋ねしていただけますか」
ラ「先に担当者さんから聞きたいことは聞いていただけますか?ライターとしては集中して取材できる時間帯が欲しいので、取材が始まってからは、タイミングを見計らって担当者さんの質問時間を私から振るような形を採りたいです」
などと握っておけばいい。
あるいは、担当者が奔放にお尋ねしても大丈夫なように取材時間を長めにしてアポを取るとか(これはこれでインタビュイーにご負担をかけるからしたくない)、取材中でも担当者に向けて「先に質問事項を進めましょうか」と笑顔で釘を刺すことでも対処はできる。
いずれにしてもオウンドメディアの担当者はプロの編集者ではない。そこを踏まえた立ち回りはできるはずだ。
なお、担当者さんの質問の機会は必要だと強く思う。その業界ならではの質問が出てきたり、取材→記事制作の枠を超えた質問を持っていたりするからね。
オウンドメディア取材の裏には、ただ自サイトに記事を載せたいだけではなく、インタビュイーから日常の仕事のやりとりでは得られないご意見を伺いたい、といったご要望が隠れているものだ。
4)編集者にインタビュー役を持って行かれる
編「取材をお願いいたします。取材には私(とカメラマン)が同行します」
などという頼まれ方をする。この場合、ライターにとっては「取材→インタビューもあたりまえに含まれる」だ。リサーチや質問事項作成を編集側でしてくれるケースもあるが、ここではまるっとご依頼されるケースを考える。
こうした依頼をしてもらえる場合、ライターは取材・執筆のプロとして認識されているケースが多い。
まっとうなライターであれば、依頼内容から取材の方向性を決め、インタビュイーをリサーチし、質問事項やインタビューの構成を考え、現場に向かう。現場に向かう前に、編集者に質問事項のリストを投げ、編集者の確認をもらったり、インタビュイーに共有してもらったりもする。
ここまでやった後、現場でいきなり編集者が好き勝手にインタビューを始めたら、心の中ではライターぶち切れ案件だ。サムダウン、サムダウン。
ライターにしてみれば「聞きたい内容を全部聞けるかな?聞き漏らしが出たらイヤだな」って確認を心の隅っこに持ちながら取材をするもんだ。時間無制限一本勝負ならいつかは聞き終わるだろうけれど、取材時間には限りがあるため、ご自分について気持ち良くお話されるインタビュイーに対しては、そのサービス精神に感謝しつつ、聞くべきことを聞けるように舵取りをしなければならない。
そう思っていたところに、前提もなにも全てぶち壊してくる編集者がいたら、それは取材クラッシャーにしか見えない。
ライター同士の飲みの席で「あのメディアのあの編集者、最低だ」って話になってもおかしくない。悪事千里を走る。
5)取材クラッシャーに遭遇した時、どうすればいいのか
さて、対策をいろいろ練っても、取材クラッシャーに遭遇しないとは限らない。遭遇した場合、タスクがとても増える。と、その前に。
「前振りと自分からの話が長めではあるものの取材クラッシャーではない」編集者も普通にいるから、ここは要注意だ。
言いたいことは言うけれど、ライターのターンをしっかり取ってくれる編集者。これはアイスブレイクをしっかりしてくれているので、むしろ感謝するべき部分。即断は禁物、対応をしっかり見極めたい。
なお、取材クラッシャーかどうかの判定は方程式があるわけでもなく、個々の感性に拠るところもあるため、怒りすぎと周囲への喧伝は要注意。まあ、質問事項をクリアできないほど自分の会話に引っ張り込むのは破壊行為だと思うけれど。
そのうえで、対策のまず1つ目は
- 取材クラッシャーが話しかけている内容(インタビューとは言えない)に、そもそもの質問事項が含まれているかどうかの確認
だ。ライターとしては依頼された(想定された)文章をお納めする必要があるので、自分が想定していた質問内容やその回答となり得るものが含まれているのかを、耳をダンボにして良く聞かなければならない。
取材クラッシャーに対してムカついている心を抑え、何を聞き、何を返されているかをよくよく確認しておかなければならない。やりとりが浅かった場合、話に割り込んで追加質問を積極的にしよう。うまくいけばそこで主導権も奪い返せる。
次に
- 取材の残り時間と「まだ聞けていない内容」のバランスを考える
取材クラッシャーは自分の興味だけで話を聞くので、執筆に必要な情報を聞き出しているとは限らない。
取材時間内で何が聞け、何が聞けなさそうかのバランスを常に把握しておかなければならない。更に言うと、原稿に最低限必要な質問事項とのバランスも把握しておきたい。
なぜなら、事前に用意した質問事項の中には「念のため」「解像度を高めるため」「メイン質問の取れ高が低かったときの保険」など、必須ではない質問事項が含まれているケースもあるから。
クラッシャーを止めるのが割と難しい場合、こうした質問事項をクラッシャーの会話内容で代替する必要がある。そのバランスを計算しながら話を聞き、メモを取っていこう。
次に
- 割り込むタイミングを計り、実行する
いつかは発生するこの行為だが、単純に早くすればいいわけでもない。インタビュイーにクラッシャーとライターの間でバチバチしている様子を悟られると取材に影響する場合もあるし、クラッシャーがへそを曲げないとも限らない。そうした「空気」は不思議と場を満たし、伝わっていくものだ。
つまり、先に示した条件を勘案しつつ、良きタイミングを見計らい、割り込む必要がある。
割り込むタイミングは、クラッシャーがおしゃべりをやめ、呼吸を整えたり黙ったりした瞬間が相応しいだろう。なんか武道の心得みたいになってきたな。
割り込み方はさして難しくない。「すみません、想定質問事項を進めていいですか?」と普通に聞けばいいだろう。
6)原稿、がんばれ
こんな取材は、自分にとって満足のいかない音源になっている可能性もある。でも、原稿、頑張れ。プロは最高点をたたき出すだけでなく、アベレージをしっかり残すのも大切だ。
落ち着け。音源の文字起こしを見るとあの日の惨状を思い出すかもしれないが、音源に罪はない。
与えられた音源の中から、そのメディアにとってベストな内容を模索しろ
たぶん、取材クラッシャーは「自分のインタビューにご満悦」だから、その内容を頑張って活かしてやれ。ライターにとって評価される対象はインタビュイーでもあり、メディアでもある。
得てして取材クラッシャーは自己中だから、原稿の修正もライターのことを考えない、イラッとする赤字をよこしてくるケースもある。耐えろ。耐えるのはプロの仕事だ。耐えて、原稿を通して、記事が公開されたら、関係を切れ。ただし同席したクラッシャーの悪口をオンラインでは書くな。なにがどう巡り巡るかわからん。