Deep Researchは便利な機能ですが、「○○について調べて」と雑に投げるのと、構成やソースまで指定して投げるのとでは、返ってくる結果の質がまったく違います。
この記事では「フリーランスの確定申告」という1つのテーマを使い、プロンプトの書き方をレベル1(入門)からレベル4(上級)まで段階的に見ていきます。もっと上級な使い方もあると思いますが、ここまで使えていればライターとしてはまあ大丈夫なんじゃないですかね。
同じお題だからこそ、「指示をちょっと足すだけでここまで変わるのか」と実感できるのではないでしょうか。
OpenAIの開発者Isa FulfordとEdward Sunは「目的(WHAT)は明確に、方法(HOW)は任せる」を基本原則として推奨しています。この考え方をベースに、4つのレベルを順番に見ていきましょう。
レベル1(入門)キーワードを投げ込むだけ

一番シンプルな使い方は、テーマをそのまま入力することです。
プロンプト例
「フリーランスの確定申告について調べて」
確定申告の基礎知識から青色申告と白色申告の違い、必要書類、スケジュール、節税ポイントなど、幅広い情報が返ってくると思います。「そもそも何を知ればいいかわからない」段階にはちょうどいいですが、自分の状況に合った答えは埋もれがち。
まったく知らないテーマの全体像を掴みたいとき、記事の企画段階でどんな切り口があるか探りたいとき、調査の方向性を決める前の「偵察」をしたいときなどには有効です。
ただ、トークンの回数制限のあるサービスで偵察に使うのはちともったいないですね。通常チャットや検索で全体像を掴んでから、Deep Researchで深掘りするのが効率的です。
プロンプト例1を使って、Gemini Pro 3.1/Deep Researchで作ってもらったレポートを↓に載せておきます。
レベル2(初級)調査の軸を1〜2本加える

テーマに時間軸・地域・比較対象・対象読者のいずれかを足すだけで、結果の焦点がぐっと絞れます。
プロンプト例
「フリーランスの確定申告について、2023年以降に変わった制度や届出ルールを中心に調べて」
「確定申告について調べて」だけでは歴史から基礎知識まで広がりますが、時間軸(2023年以降)と焦点(制度変更・届出ルール)を加えると、インボイス制度の影響、電子帳簿保存法の義務化、定額減税の扱いなど、今まさにライターが知るべき情報に絞られた結果が返ってくるようになります。
足すと効果的な軸の例をいくつか挙げます。時間軸なら「2024年〜2025年の」「過去3年間の変化を含めて」、地域軸なら「東京都の助成金に限定して」、比較軸なら「青色申告と白色申告のコスト比較で」、対象者軸なら「年収300万〜500万のフリーランス向けに」。こんな具合です。
Geminiだとこの段階でも研究計画を提示してくれるので、「この方向で合ってますか?」と確認しながら軸を調整できますよ。
プロンプト例2を使って、Gemini Pro 3.1/Deep Researchで作ってもらったレポートを↓に載せておきます。
レベル3(中級)出力形式とソースを指定する

かなりがっつりと調査するレベルです。出力の形式、構成、情報源の種類を明示することで、そのまま記事の素材として使える出力が手に入ります。
プロンプト例
「フリーランスの確定申告について、2023年以降の制度変更が実務に与えた影響を調査してください。以下の構成で:
- 要点まとめ(300字以内)
- インボイス制度が免税事業者に与えた影響(登録率の推移データ含む)
- 電子帳簿保存法の実務対応(必要なツール・コストの比較表つき)
- 2024〜2025年に新たに使えるようになった控除・特例
- フリーランスが「今すぐやるべきこと」チェックリスト
情報源は国税庁・中小企業庁の公式資料、税理士法人のブログ、日経・東洋経済等の主要メディアを優先してください。個人ブログやSNS投稿は除外で。」
レベル2から大きく変わるのは、構成の指定と情報源の品質コントロールです。Deep Researchは指示がなければ自分で構成を決めますが、記事の構成案がすでにあるなら「この流れで素材を集めてほしい」と伝えたほうが、そのまま執筆素材に使えます。
ここまで指示を出すには、出す側にも相応の知識が求められますよね。AIから良いリターンを得るには、良い指示を出さねばならず、つまりは、AIを操作する人間の力量が、AIの出力にも影響してくるんです。
5Pフレームワークを使ってみる
このレベルで役に立つのがTrust Insights社の「5P Framework」です。
- Purpose(目的)何のための調査か?
- People(読者)誰が読むのか?
- Process(範囲)どのトピック・時期・地域を対象とするか?
- Platform(情報源)どの種類のソースを使う/避けるべきか?
- Performance(出力形式)どんなフォーマットで出すか?
この5つを埋めるとプロンプトの抜け漏れがなくなります。
ChatGPTはPDF・Word・Markdownでのエクスポートに対応しているので、構成を指定する意味が特に大きいです。Perplexityは出力形式を指定しないとデフォルトのフォーマットになるので、「表形式で」「箇条書きで」など明示しておくのがコツ。
プロンプト例3を使って、Gemini Pro 3.1/Deep Researchで作ってもらったレポートを↓に載せておきます。
レベル4(上級)仮説検証と多角的分析

一番高度な使い方は、仮説を先に提示してその検証を依頼するプロンプトです。「反証も求める」と添えることで、バランスの取れた調査になります。すでに自分の頭の中にデータや仮説が揃っていて、その確認を取るためのリサーチであれば、このレベルで行うのがオススメです。
プロンプト例
「フリーランスの確定申告に関して、以下の仮説を検証してください:
仮説:インボイス制度の導入により、年収500万円以下のフリーランスライターの多くが課税事業者に登録したが、実際には消費税納付額が手取り収入を圧迫し、廃業率の上昇につながっている。
検証のために以下を調査してください:
- インボイス登録率の推移(職種別・年収帯別のデータがあれば)
- 課税事業者になったフリーランスの実質負担額の試算事例
- 2割特例・簡易課税の利用状況と効果
- フリーランスの廃業率データ(2022年vs2024年の比較)
- 反証となるデータ(登録によってメリットがあった事例)も積極的に提示すること
税理士や会計士の見解、業界団体の調査レポート、国会での議論なども含めて、賛否両論を公平に整理してください。最後に、現時点で未登録のフリーランスが取りうる3つの選択肢を、それぞれのメリット・デメリットとともに提示してください。」
レベル3との決定的な違いは2つあります。
1つ目は仮説を先に提示している点。調査の方向性が明確になり、Deep Researchが「何を証明/反証すべきか」を理解した上で情報を集めるので、出力の焦点がぶれません。
2つ目は反証も求めている点。Deep Researchは指示がなければ都合のいい情報だけを集めがちですが、「反証も積極的に」と書いておくと両論が出てくる。
取材前リサーチへの応用もこのレベルで効いてきます。たとえば「来週インタビューする税理士が"フリーランスは全員インボイス登録すべき"と主張している。この主張に対する反論と、まだ深掘りされていない論点を5つ提案して」のように使えば、良い質問設計に踏み込めます。
プロンプト例4を使って、Gemini Pro 3.1/Deep Researchで作ってもらったレポートを↓に載せておきます。
上級テクニック プロンプトの「前処理」
通常のチャットでまず雑に質問を投げ、AIに「Deep Research用のプロンプト」を作らせるという手法があります。「フリーランスの確定申告について記事を書きたいんだけど、Deep Research用のプロンプトを作って」と投げれば、構成・ソース指定・出力形式まで含んだプロンプトが出てきます。制限のあるトークンを無駄遣いしないための賢いやり方です。
まとめ 目的は詳しく、手順は任せる
4つのレベルを振り返ると、やっていることはシンプルです。
- レベル1 テーマだけ投げる(偵察向き)
- レベル2 時間軸や比較軸を1〜2本足す(焦点を絞る)
- レベル3 構成と情報源まで指定する(そのまま素材になる)
- レベル4 仮説を提示して反証も求める(取材レベルの調査)
レベルが上がるごとにプロンプトは長くなりますが、増えているのは「手順」ではなく「条件」です。OpenAIの開発者も言っている通り、Deep Researchのエージェントは自分で調査経路を見つける力があります。目的と条件は詳しく書いて、手順は任せる。これが一番いいバランスです。
まずはレベル2から試してみてください。レベル1からたった1行足すだけで、返ってくる結果の質が変わるのを実感できるはずです。それぞれのレベルの例を見て「こうじゃない」と思った方、それはあなたの描いている希望が、プロンプトに含まれていないからではないでしょうか。是非、それぞれのレベルのプロンプトを参考にし、自分ならではの条件を付加して試してみてください。
ビジネス寄りのメディアや対象者インタビューであればレベル4を、そこから規模や「ガチ感」がゆるくなるにつれて、レベル3・2ができるようになれば、インタビュー前のリサーチとしては十分役立つのではないでしょうか。