AI文字起こしサービスが当たり前になってきました。取材音声をアップするだけでテキストの下地ができる時代は、フリーライターにとって本当にありがたいものです。ただでさえAIの台頭で単価が抑えられがちなライター界隈。使える道具は使い倒して、少しでも工数を削減しないとやってられません。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。その音声データ、サービス側のAI学習に使われているかもしれませんよ?
文字起こしは便利、でもデータはどこへ行く?
「便利すぎて怖い」という感覚は、あながち間違っていません。
取材先の方との会話、社内会議のやりとり、医療現場での問診——そういった機密性の高い会話データをクラウドにアップロードすることで、AI学習に使われるリスクがあります。
「AI学習に使われる=即座に情報漏洩」では、決してありません。収集された音声データが直ちに第三者に渡ることは考えにくいです。しかし、大量の音声データが蓄積されれば、今後のサービス変更、企業の買収・合併、システムへの不正侵入といった出来事をきっかけに、意図しない形で情報が漏れるリスクが起こりえます。
個人情報保護委員会も2023年に注意喚起を発出しており、「生成AIサービスを提供する事業者が当該個人データを機械学習に利用しないことを十分に確認すること」と呼びかけています。この考え方は、AI文字起こしサービスにもそのまま当てはまります。
企業ともめ事になったとき、フリーライターは法的に戦う時間も財力もありませんよね。
取材相手の発言が意図せず学習データになるリスクはさけたいもの。プライバシーポリシーの一文だけという現実は怖くもありますが、この情報を保存するなどして、漏洩に気をつけていた事実は残しておきたいものです。
各サービスのAI学習状況を確認してみました
主要な日本語対応文字起こしサービスを中心に、プライバシーポリシーや公式情報から「音声・文字起こしデータがAI学習に使われるか」を調べました。
なお、プライバシーポリシーは随時更新されることがあります。最新情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。ここの情報は2026年3月12日時点のものです。
Notta(ノッタ)|プランによって異なる
Nottaは日本でも広く使われている文字起こしサービスですが、プライバシーポリシーをよく読むと、無料プランおよびプレミアムプランでは音声データが学習に使用される可能性があります。

公式プライバシーポリシーには「当該パートナー企業は、お客様がご利用のプランに応じて、お客様の音声データを音声認識トレーニングに利用する場合があります」と明記されています。Nottaが利用している音声認識エンジンの提供元が、プランによっては学習データとして使用するという仕組みです。

エンタープライズプラン以外は学習利用を前提とされていることをおさえておいたほうがよいでしょう。
判定:無料・プレミアムプランは学習に利用される可能性あり
LINE Works AiNote|有料プランは学習に使用しない
LINE Worksが提供するAiNoteは、無料プランではデータをAI学習することを明言しているものの、有料プランでは音声データをAI学習に使用しないことが公式に確認されています。

月額1440円のプランから、データの学習利用はないと明言されていることから、フリーランスでも使いやすいサービスではないでしょうか。1440円のプランは文字起こしをできる時間が月あたり600分(10時間)と若干短いのが気になりますが、安心感はバッチリです。
なお、文字起こし時間のみ追加できるプランがあるようです。

企業の機密情報を扱うシーンでも安心して使いやすく、議事録担当者にとっても導入しやすいサービスです。ただし、無料のフリープランはAI学習に利用される可能性があるとの指摘があります。安全に使いたい場合は有料プランを選びましょう。
判定:有料プランはAI学習に使用しない
toruno|リコー製・学習に使用しない
株式会社リコーが提供するtorunoは、音声データ・文字起こし結果がAI学習に利用されないことを明示しています。

公式FAQには「音声データ、文字起こし結果は利用されません」と明記されており、データはすべて日本国内リージョンのAWS上で保管されます。
2024年3月13日以前に契約していたユーザーについては、それ以前のデータに旧規約が適用され、音声認識エンジンの学習目的で利用されていた経緯があります。が、これから契約するのであれば関係ありませんね。

個人向けの料金プランは、月あたりで10時間の文字起こしが1,650円。LINE Worksと近しい価格帯です。追加オプションが1分あたり2.2円なのは、100分360円のLINE Worksはお安いですので、10時間を大きく超える場合はtorunoの方がリーズナブルになりそうです。
リコーは日本の大手企業であり、企業・行政機関への導入実績も多いため、安心感はありますよねえ。
判定:AI学習に使用しない(現行規約のユーザー)
スマート書記 / Otolio(エピックベース)|学習させない独自アルゴリズム
エピックベース株式会社が提供するOtolioは、「AIに機密データを学習させることなく、AI精度を向上させる」独自のアルゴリズムを特許取得済みで採用しています。

価格的には10,000円+αという月額料金なので、フリーランスがちょこちょこ使う想定はしていないのかも。法人ががっつり取り組みたいときなどに検討すると良いかもしれませんね。
公式サイトには「AIに学習させることなく社内の専門用語・固有名詞の認識精度が向上し続けるため、セキュリティを保ちながら議事録作成時間を最大90%以上削減」とあります。
使えば使うほど精度が上がるのに、データを外部AIに学習させない——この仕組みは法人・企業向けサービスとして競合との大きな差別化ポイントです。累計7,000社以上の利用実績も、安全性への信頼に裏付けられていると言えるでしょう。
判定:AI学習に使用しない
Rimo Voice(リモ)|有料プランは学習に使用しない(利用規約に注意点あり)
Rimo合同会社が提供するRimo Voiceは、日本語特化の高精度AI文字起こしサービスで、Panasonic・東芝・内閣府・JR東日本など2,000社以上の導入実績を持つ国産サービスです。

セキュリティへの取組みとして「AI学習なし」と明記されており、安心です。ISO27001およびISO27017の認証も取得しており、データは日本国内のサーバーで保管されています。
一方で、利用規約には「データ等から情報を抽出・解析し、本サービスの精度を向上するため」に音声・映像・編集データを利用できる旨が記載されています。

これは「AI学習」とは異なる「サービス改善目的での解析」であり、プランページの「AI学習なし」と矛盾するものではないと考えられますが、気になる場合は契約前に同社に確認しておくと安心です。
料金は、機能が最もシンプルな「文字起こしプラン」で月額1,650円。詳細説明によると

文字起こしくらいしかできないものの、月額1,650円で35時間分の音声ファイルを文字起こしできるようで、単純な文字起こし時間だけであればこれが最も長いかも。
ただし、AI要約を始めとした機能は使えなさそうです。
Webサイトを巡回した限り、料金プランの説明はとても分かりづらかったです。この記事を見て契約しようと思ったかたは、かならず公式に料金プランとやりたいことを問い合わせてください。
判定:有料プランはAI学習に使用しない(利用規約の「精度向上目的での解析」は別途確認推奨)
Otter.ai(オッター)|学習に使用する(英語専用)
Otter.aiは英語専用のサービスで、現時点では日本語の正式サポートはありません。参考として記載します。
プライバシー&セキュリティページによると、Otterはツールで作成されたトランスクリプトや録音を使って自社のAIモデルを学習させています。同社は音声の「非特定化」処理を行っているとしていますが、ユーザーデータを学習に利用していることは事実です。訴訟も提起されています。
英語会議の記録ツールとして検討する場合は、このポリシーを踏まえた上で使用してください。
判定:AI学習に使用する(英語専用サービス)
OpenAI Whisper(ローカル利用)|データは外部送信なし
少し毛色が異なりますが、OpenAIが公開しているオープンソースの音声認識モデル「Whisper」をローカル環境にインストールして使う方法があります。
ローカル利用の場合、音声データはインターネット上に送信されず、外部サービスのAI学習に使われることは一切ありません。完全に自分のPC内で処理が完結します。
日本語精度も高く、無料で使えるため、プライバシーを最優先したい場合の選択肢として注目されています。ただしPythonなど技術的なセットアップが必要なため、非エンジニアには敷居が高めです。GUIツール「Kotoba Whisper」など、より手軽に使えるラッパーアプリも登場しています。
判定:ローカル利用であれば外部送信なし・学習に使用されない
AI学習利用が気になる場合は、このサービスを検討しよう
データのAI学習利用が気になる場合は、以下のサービス・ツールを検討してみてください。
Rimo Voice(文字起こしプラン)は、フリーライターにとって特に注目したい選択肢です。月額1,650円で月2,100分(35時間)まで音声ファイルをアップロードして文字起こしができ、AI学習なしが明記されています。
「ライター・リサーチャーなど、文字起こしのみを必要とされる方向け」と公式に位置づけられており、まさに取材文字起こし用途にフィットしたプランです。ただし、このプランではリアルタイム録音・AI要約・議事録Botは使えません。あくまで「録音した音声ファイルをアップして文字起こし」という用途に限定されます。
トップの料金プランのところに、月あたり35時間使えることが明言されていないのは、やはり不親切で疑いを持ってしまいます。契約の際は必ず確認してくださいね。僕の記事を信じて間違っても責任は取れません。
toruno(リコー)は、日本国内サーバー保管・AI学習不使用を明示しており、個人から法人まで幅広く使えるサービスです。個人向けの「torunoパーソナル」プランは累計3時間まで無料で試せます。リコーという大手企業がバックにいる安心感もあり、セキュリティ基準が厳しい組織での利用にも適しています。
スマート書記 / Otolioは、法人・企業向けに特化した議事録作成サービスで、AI学習なしに精度向上を実現する独自技術が強みです。機密性の高い会議での利用や、ISO認証が必要な企業での導入に向いています。
LINE Works AiNoteは、LINE Worksを導入済みの企業にとって親和性が高い選択肢です。グループウェアと文字起こしをシームレスに使えます。有料プランであればAI学習なしで利用できます。
ローカルWhisperは、コストを最小化しつつ完全なデータ管理を実現したい場合の切り札です。セットアップさえ乗り越えれば、精度・コスト・プライバシーのすべてを高い水準で満たせます。
まとめ:AI学習利用の状況を一覧で確認
AI文字起こしサービスの「AI学習利用」の状況を整理すると、以下のようになります。
| サービス | 学習利用 | 備考 |
|---|---|---|
| Notta | あり(プラン依存) | 無料・プレミアムプランは利用される可能性 |
| LINE Works AiNote | なし(有料プラン) | フリープランは学習利用の可能性あり |
| toruno(リコー) | なし | 日本国内サーバー保管 |
| スマート書記 / Otolio | なし | 特許アルゴリズムで学習なしに精度向上 |
| Rimo Voice | なし(有料プラン) | 国産・ISO認証取得。規約の「精度向上目的解析」は要確認 |
| Otter.ai | あり | 英語専用サービス |
| Whisper(ローカル) | なし | 技術スキルが必要 |
AI学習されない最安プランの料金比較
「学習されない」条件を満たす最も安いプランで比較すると、以下のようになります。
| サービス | プラン名 | 月額(税込) | 月間文字起こし時間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Rimo Voice | 文字起こしプラン(月払い) | 1,650円 | 2,100分(35時間) | ファイルアップロードのみ。リアルタイム録音・AI要約は不可 |
| toruno(リコー) | パーソナル(有料) | 1,650円 | 600分(10時間) | 超過分は2.2円/分の従量課金 |
| LINE Works AiNote | ソロ(月払い) | 1,440円 | 600分(10時間) | フリープランは学習利用の可能性あり |
| Rimo Voice | プロプラン(月払い) | 4,950円 | 無制限 | リアルタイム録音・AI要約・議事録Botも利用可 |
| スマート書記 / Otolio | 要問い合わせ | 非公開 | 要問い合わせ | 法人専用。14日間の無料トライアルあり |
| Whisper(ローカル) | — | 無料 | 制限なし | Pythonなど技術セットアップが必要 |
※ LINE Works AiNoteのフリープランは月300分まで無料ですが、AI学習に利用される可能性があるとの指摘があるため上記には含めていません。toruno・Rimo Voiceともに無料トライアルがあります(torunoは累計3時間、Rimoは申込制)。
フリーライターや個人での利用であれば、toruno(月1,650円・600分)またはLINE Works AiNoteソロ(月1,760円・600分)が最もコスパよく安全に使える選択肢です。文字起こし量が多い場合や時間制限なしで使いたい場合は、Rimo Voiceのプロプラン(月4,950円・無制限)も検討に値します。
番外編:Google Pixel のレコーダーアプリ|スマホ本体で完結する選択肢
「アプリ契約なしで、手元のスマホだけで安全に文字起こしがしたい」という方には、Google の純正スマートフォン「Pixel」シリーズに標準搭載されているレコーダーアプリの選択肢もあります。
最大の特徴は、インターネット接続なしでリアルタイムの文字起こしができる点です。Pixel に搭載されている独自チップ「Tensor」が端末内で音声認識を処理するため、音声データがクラウドに送信されません。取材現場がWi-Fiのない場所でも、録音と同時に文字起こしが始まります。
プライバシー面については、Google の公式ヘルプページに「レコーダーはフェデレーテッドラーニングなどのプライバシー保護技術を使用して改善される」と記載されています。フェデレーテッドラーニングとは、個人の音声データそのものをサーバーに送らず、端末上で処理した統計的な情報だけを集める仕組みです。通常のクラウドサービスのように「録音内容がサーバーに蓄積される」わけではありません。なお、ユーザーが任意で「Googleへ録音を共有する」設定をオンにすることもできますが、これはあくまでオプションです。
使い勝手の面では、アプリを起動してボタンを一度タップするだけで録音と文字起こしが同時に始まるシンプルさが好評です。文字起こし結果をタップするとその箇所の音声が再生されるので、確認・修正の作業もスムーズです。Pixel 9 シリーズでは2025年3月からレコーダーの要約機能が日本語にも対応しました。Googleドキュメントへの書き出しにも対応しており、取材後すぐにテキスト原稿の下地として活用できます。
注意点としては、話者の自動分離(誰が発言したかの識別)には対応していないため、複数人のインタビューでは発言者が混在して表示されます。また、「もう一度文字起こし」機能を使った場合には音声ファイルがGoogleのサーバーで処理されることがある旨が公式ヘルプに記載されています。初回録音時はオフライン処理が基本ですが、この点は覚えておくとよいでしょう。
スマホ本体の購入が前提となるため、すぐに導入できるわけではありませんが、Pixelへの機種変更を検討しているならレコーダーアプリの存在は大きな加点ポイントになります。取材のたびにアプリの料金を気にせず使える点は、フリーライターにとって特に魅力的でしょう。
判定:オフライン処理が基本でAI学習に使用されない(要任意設定の確認)。Pixelシリーズ専用
便利さとプライバシーはトレードオフの関係にあることが多く、無料サービスほどデータを活用してビジネスモデルを成立させている傾向があります。
取材音声や会議録音の機密性に応じてサービスを使い分けることが、AI活用時代を安全に乗り越えるための第一歩になるでしょう。
※本記事の情報は2026年3月時点のものです。各サービスのプライバシーポリシーは随時更新されるため、利用前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。